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藤田医科大学病院では2019年12月、院内ラジオ「フジタイム」を開設しました。患者さんに好評で、病院広報の一形態としても注目されています。現在は、YouTube配信を行い、登録者は約1,300名です(2025年2月末現在)。同院企画広報室の安藤さんと小島さんにその目的や運営について伺います。
—「フジタイム」はどのような経緯で始まったのですか。
安藤さん:きっかけは、当院を運営する藤田学園の評議員である中部日本放送(CBC)論説委員(当時)の後藤克幸さんが星長清隆理事長に院内ラジオを開局してはどうかと提案してくださったことです。後藤さんは、自身のラジオ番組で、立命館大学映像学部の小川明子教授から英国では院内ラジオが普及していると聞き、日本でもやってみてはどうかと思われたそうです。ちょうど企画広報室でも、当時の院長と、院内での季節のイベントなどに参加できない入院患者さんに何かベッドサイドで楽しめる企画はないだろうかと考えていました。そこで、院内ラジオの開局をめざし、2019年7月に募集をして、関心のある人たちでワーキンググループを作りました。
メンバーは当初は5、6名でしたが、徐々に増えていきました。後藤さんにもワーキンググループに入っていただきアドバイスいただいたほか、小川教授にも英国の院内ラジオの状況を教えていただきながら進めていきました。
小島さん:当時のワーキンググループでは、ラジオ放送を開始するにあたって目的などの大枠を示す綱領(表参照)を作成し、理事会で了承を受けました。
—現在のスタッフの構成や番組の作り方について教えてください。
小島さん:現在ワーキンググループには、職員ボランティア12名、藤田医科大学の学生のボランティア13名、企画広報室から3名が関わっています。月に1回集まれるメンバーで会議を行い、トークのテーマを決めます。トークのテーマは、季節や趣味の話題、病院のアメニティー紹介、医師や大学教員などが解説する最新の医療情報、コメディカルのインタビューなどです。テーマ決めは配信日の2か月前、収録は1か月前が目安で、録音が完成するのは1週間ほど前です。この日程管理やメンバーの割り振りなどを企画広報室の担当者が行っています。
安藤さん:編集は、藤田学園本部広報の編集技術を持つ方に依頼しています。
小島さん:現在は、毎月2回、第1・第3水曜日配信しています。患者さんが入院する10日から2週間くらいの期間にちょうどよい間隔だと考え、この配信頻度にしています。
安藤さん:配信時間はおよそ1時間弱で、音楽は著作権の関係や放送時間も長くなるので流しません。朗読する本は、著作権が切れたものを選んでいます。多職種で集まって日常のことをテーマに和やかに伝える、というのが方針で、細かいルールはありません。
小島さん:ただ、医療用語や、なかでも略語は患者さんに伝わらないので、使わないというルールがあります。
安藤さん:企画広報室では毎回チラシを作成し、院内に設置しています。患者さんに興味を持っていただくためにも、チラシは必須だと考えています。
—始める際に苦労したことは何でしょうか。
小島さん:そもそもラジオ番組の作り方や流し方を知りませんでした。みんなが素人ですから、技術的にも言葉選びなども生放送はハードルが高かったので、収録にしました。言い間違えなどは再収録や編集でカバーできますから。
台本は企画広報室の担当者が書いています。MCの一人一人の発言まで細かく書くので手間がかかりますが、最近はMCが収録に慣れてきて、省略できるようになってきました。
小島さん:放送の手段も一から検討し、配信当初、患者さんには院内のフリーWi-Fiで番組をストリーミング配信する形をとりました。収録用機材は、病院で予算を取り購入しました。
安藤さん:第1回の放送は、2019年12月18日でした。その後、すぐにコロナ禍となり、番組を収録していいのかという話にもなりましたが、感染の専門医にもアドバイスをもらいながら、広い会議室で距離を取り、アクリルパネルを立てて収録しました。
—ラジオという形態を選んでよかったことや患者さんの反響はいかがですか。
小島さん:入院患者さんが目を閉じて気楽に聞いてくだされば、というのがラジオを選んでいる理由です。
映像にすると見る人は画面に集中しなければならないので、原則として動画にはしませんが、これまでに数回、動画を制作しています。例えば、放送100回記念として病院の敷地内を歩いて散歩コースを紹介したり、お子さん向けに絵本の読み聞かせや手遊び、折り紙の折り方を紹介したりしました。いずれも再生回数が多く、好評でした。
安藤さん:コロナ禍が明けてからは公開収録ができるようになり、収録の様子を入院患者さんが見に来てくださいます。
小島さん:患者さんから「みなさんの楽しそうな声を聞いて癒やされます」というお便りをいただきます。YouTubeにコメントを書き込んでくださる方もいて、楽しみにしてくださっているのだと思います。病気の悩み、闘病生活など少しでも気持ちを出していただける場になればと願っています。
安藤さん:想定していなかった効果もありました。院内の多職種間のコミュニケーションの向上です。番組作りの作業をともにすることで、あるいは出演してもらうことで顔が見える関係になり、業務で何か聞きたいときにすぐ聞けるようになりました。
—院内ラジオ放送を始めたい病院へのアドバイスをお願いします。
安藤さん:機材はプロ仕様でなくても、スマートフォンでも収録はできます。ただ、方向性、コンテンツは事前に入念に準備しておく必要があります。最初から完璧なものをめざすのではなく、まずは小さく始めるのがよいのではないでしょうか。
小島さん:まずは1回試してみて、不定期で続けるといいと思います。
安藤さん:大変なこともありますが、楽しみながらできると思います。
公開収録 の様子
▼【院内ラジオ】フジタイム
https://youtube.com/@fujitime2019?si=-ChgSACgjtYsxH0X