/* Template Name: 投稿ページ「アソースタイムズ」 Template Post Type: post,asourcetimes */ ?>
ASOURCE®TIMES
新型コロナウイルスの感染が広がる中、医療機関内での感染も散見される。院内感染対策は、患者やスタッフの命を守るための医療安全の基盤である。改めて院内感染対策の基本を確認したい。
医療機関は、易感染性の人(宿主)が集まり、感染源となる人も多く、しかも感染経路は接触、飛沫、空気、経口と多様である。医療スタッフの院内感染を予防する基本となるのは、「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」である。
日本環境感染学会では、全ての患者の血液、体液(汗を除く)、分泌物、排泄物、健常でない皮膚粘膜は、感染性があるものとして対応することとしている。それらからの感染防止として特に重要とされるのが手指衛生(手洗い、手指消毒)で、すべての医療行為の基本となる。
長崎大学病院がこのほど作成したビデオ『新型コロナウイルス感染症に対する個人防護具の適正な着脱方法について』(https://youtu.be/LPYX2NQoBQg)では、講師を務める同大感染制御教育センターの田代将人氏が「個人防護具の着脱の際、特にマスクに付着したウイルスから接触感染が起きやすい。マスクからの接触感染を防ぐためには、頻回の手指消毒が有効」と述べている。
洗い残しが起こりやすい部位は、指先、爪と皮膚の間、甘皮の部分、手のひらのしわ、親指の付け根、ふくらみ、手首。日々行っている行為だけに、きちんと洗えているかどうかを再確認することは重要といえる。
個人防護具(PPE)は、手袋、マスク、エプロン/ガウン、ゴーグル/フェイスシールドで、状況に応じてこれらの中から選択して使用する。使用後はいずれも外側が汚染されているので、触れないように慎重に脱ぎ、すぐに手指消毒をすることが重要である(図1)。
第一種感染症指定医療機関に指定されている大学病院などでは、最低でも週に1回は個人防護具の着脱訓練をしているところが多く、感染症専門医は「お互いにチェックしながら、安全に素早く着脱できるようにすることが、感染予防の鍵」と指摘する。JCI認定医療機関である藤田医科大学病院では手指衛生の推進に特に積極的に取り組み、全職員を対象とした手洗い研修の実施や、手指消毒薬の使用量調査などを行い感染対策の遵守に努めている。その他全体的な取り組みの例として、東京都立駒込病院では毎週1回の院内ラウンドにおいて、環境調査や、感染予防対策が適切に行われているかを確認するなど、各医療機関における様々な方法で院内感染対策が行われている。
図1 個人用防護具(PPE)の外し方の順序
出典:職業感染制御研究会
近年、感染リスクを評価する上で注目されているのが「One World, One Health」という考え方である。これは、人の健康と病気を理解する上で、すべての生物や環境は相互につながっていると包括的に捉える概念。
衛生環境の整っていない国など、本概念の議論はおのずとそういった国々に向けられがちで、我々にはなかなか実感が湧かないことかもしれない。しかし世界レベルではなくとも、地域に開かれた存在である医療機関として、施設内での感染予防に取り組みつつ、地域でどんな感染症が問題になっているか、インフルエンザのように全国レベルではどんな感染症が流行しているのかなど、感染に対して視野を広げることも求められている。