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公開日:2021.02.18
ファイザー社製新型コロナウイルスワクチンについては、従来型の注射器では5回分しか採取できませんが、ローデッドスペースタイプという特殊な注射器を使うと6回分が採取できるとされます。注射器の種類によってどうして接種回数に差が出るのでしょうか。
ファイザー社製新型コロナウイルスワクチンの1バイアルの原液量は0.45mLですが、1.8mLの生理食塩水を足して希釈するため、2.25mLの量となります。1回の接種で1人に投与するワクチンは0.3mLのため、 計算上7回採取できますが、一般的な注射器を使う場合、注射器の構造上、薬液の一部が筒先(バレル)に残ってしまうため実際には0.3mL以上を吸い上げます。薬液が残る隙間の部分をデッドスペースといい、そこに残ってしまった薬液は、押し込んでも出てきません。注射器で薬液を吸い出していくと、6回目には1回の接種に必要な0.3mLは残っていないとされます。厚生労働省も国内で普通に使用されている注射器では、5回分しか採取できないことを認めています。注射器に残った薬液は破棄されます。
この薬液のロスを防ぐために開発されたのが、ローデッドスペースタイプの注射器です。外筒と押子(プランジャー)の先端が精密な合わせになっているため、筒先に残る薬液を最大限に押し出すことが可能です。こちらのタイプの注射器を使うと、注射器先端の隙間に残る薬液ロスが0.035mL以下にすることが可能で、一般的な注射器を使う場合と比較して薬液ロスが約95%少なくて済み、6回分の採取が可能となります(図)。
この仕組みによって、同量にもかかわらず5回分が6回分に増えるということは、接種回数が約2割増しになることを意味します。また、高価な薬液を無駄にすることなく使用できます。
ローデッドスペースタイプの注射器は、インスリン投与などに限定され、一般的に使われている注射器に比べて使用頻度が低いため、世界的に品薄となっています。日本でも十分な数を確保できるめどは立っていません。厚労省はこのほど、特殊な注射器の確保が難しいため、1バイアルあたりの接種回数を当初想定していた6回から5回に減らすことを決めました。貴重なワクチンを無駄にしないためにも盤石な医療機器の確保体制が望まれます。
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