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公開日:2020.12.22
次世代の手術支援ロボットの開発が進み、実用段階を迎えつつあります。開発された新機種には、身体への負担を軽減する低侵襲手術という従来の機能のほか、AI搭載、デジタル化によるデータ活用、触感機能など多彩な新機軸が打ち出されています。その中で注目される機種を紹介します。
手術支援ロボットの開発が進む背景にあるのは、世界市場のトップシェアを占めるダヴィンチの特許切れがあります。ダヴィンチの特許が壁となりロボットを開発できなかった数十社ともいわれる競合各社にとってチャンスが巡ってきたといえます。
国内初の手術支援ロボットとして注目を集めているのが「hinotoriTM(ヒノトリ)サージカルロボットシステム」で、今年12月初めに発売されました(写真1)。川崎重工業とシスメックスが折半出資するメディカロイドが開発したものです。
ヒノトリは4本のアームを備えた「オペレーションユニット」と、操作設備の「サージョンコックピット」から構成され、小型サイズで移動しやすくなっています。また、ヒノトリの動作状況をモニタリングするネットワークサポート機能を装備しています。手術中にロボットが正常に作動しているかを外部からチェックでき、リモートサポートによるトラブル解決が可能です。サージョンコックピットでは、高精細な3Dの内視鏡画像を見ながらオペレーションユニットのアームを操作します。アームの太さは人の腕ほど細く、8つの関節を持ち、動作の自由度が高く、アーム同士やアームと手術台横の助手がぶつからないよう制御されています。操作するアームは、フットペダルで切り替えます。今年9月に前立腺がんなど泌尿器科向けが保険対象となり、2020年12月14日には1例目の手術(70代男性、前立腺がんの摘出)が神戸大学病院国際がん医療・研究センターで行われ、成功しました。来年9月末までに消化器外科と婦人科への適用を取得したいとしています。
「hinotori サージカルロボットシステム」の発売より前にダヴィンチに続く第2の手術支援ロボットとして登場したのが、「センハンス・デジタル・ラパロスコピー・システム」(センハンス)です(2019年5月に製造販売承認)。米トランスエンテリックス社が開発したもので、独立した3つのアームと3Dカメラを搭載したロボットで、術者は離れたコックピットで遠隔操作します(写真2)。
操作性の特徴として、鉗子先端にかかる張力や圧をコックピット内の術者の手に伝える触感機能があります。縫合時に糸の引っ張り具合いを感じ取れ、鉗子が臓器に接触している感触も伝わるので、臓器損傷のリスクの軽減につながります。センハンスでは、既存の腹腔鏡で用いられる硬性鏡、トロカール、鉗子などがリユースできるので、ランニングコストを抑えることができます。また、視線追跡装置を搭載しているため、術者の目の動きでディスプレーに映る内視鏡映像を切り替えられます。
センハンスは、保険適用上、腹腔鏡として扱われているため、腹腔鏡手術として保険収載されている術式であれば全て保険診療として行えます。ちなみに、ダヴィンチはロボット支援手術として保険適用されている21術式に限られています。
このほか、米国のグーグルの親会社アルファベットとジョンソン・エンド・ジョンソンが共同で立ち上げたヴァーブ・サージカルでは、グーグルが持つAI(人工知能)技術とジョンソン・エンド・ジョンソンの持つ外科ユニットのノウハウを融合した近未来型の手術支援ロボットを開発しています。
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