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ASOURCE®NAVI
公開日:2022.02.21
2030年には、日本の人口の3人に1人が高齢者となる見込みです。こうした高齢化社会の進行を背景に病院・診療所のほか、訪問看護や介護施設などでの介護・看護の需要は高まるばかりです。それに伴い、療養生活を支える看護師の役割はますます重要となってきます。そこで、アソースナビでは2回にわたり、看護師の将来展望や、看護師だけでない看護職の特徴や役割についてとりあげます。
本邦では、高齢化社会が確実に進行しており、2030年には65歳以上の高齢者の割合が30%強、75歳以上の後期高齢者は20%弱までになり、2035年には介護需要がピークを迎えると予想されています。
こうした状況を背景に今後、介護・看護の需要が増大し、看護職のニーズは高まるものとみられます。看護師や准看護師などの看護職員数は2020年末時点で約128万人ですが、団塊の世代が後期高齢者を迎える2025年には、約175万〜約182万人までしか増えないものとみられ、厚労省 は約6万人〜最大27万人不足するとの推計を公表しています。国はこれに対応するため、看護学校の入学定員を増やすなど看護師の人材確保に向けて取り組みを進めています。看護師学校・養成所の入学定員は2002年には5万3,800人でしたが、2018年には6万7,881人に増えています。看護大学の定員は同期間に3倍以上増加しています。これに伴い、看護師国家試験の合格者も2005年には4万4,137人だったのが2021年には5万9,769人と増えています。
しかし、このような状況にかかわらず、近年看護師不足が指摘されています。有効求人倍数をみると、2020年2月の全職種平均は1.18に対して看護師は2.24と高い水準を示していました。その原因としては、結婚、妊娠、出産、育児などのライフステージの変化をきっかけに離職するケースが多いからです。日本看護協会の実態調査によると、2019年度の正規雇用の看護師の離職率は11.5%と高いものでした。
国の医療政策により病院の病床数の削減や入院日数の短縮化が進み、退院後の自宅での療養生活の重要性が増しています。そうした状況に対応するサービスとして看護師が自宅を訪問し看護する訪問看護のニーズが高まっています。訪問看護では主治医が作成する訪問看護指示に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体看護を行います。利用者は乳幼児から高齢者まで幅広い年齢が対象となります。診療科は内科系を中心に、精神科、脳神経科、整形外科など多岐にわたります。訪問看護に従事する看護師の就業場所の多くは、訪問看護ステーションとなります。訪問看護ステーションの事業所数は、2012年度の診療報酬・介護報酬改定以降、急速に増え、2021年は約1万3,000カ所となっています。訪問看護ステーションで働く看護師も2019年時点で約5万5,000人と増えています。国は医療・介護が必要となっても、住み慣れた地域で療養できる「地域包括ケアシステム」の構築を進める上で、2025年までに12万人の訪問看護師が必要と推計しています。
高齢者の増加に伴い介護保険施設の需要は高まり、そこで働く看護師の役割もますます大きくなっています。2020年介護サービス施設事業所調査によると、介護保険施設には、介護老人福祉施設8,306カ所、介護老人保健施設4,304カ所、介護療養型医療施設(2023年度で廃止)556カ所、介護医療院536カ所があります。介護士は介護施設の入居者の生活全般をサポートするのが主な仕事ですが、看護師は入居者のバイタルチェックなどの健康管理や医療行為を行います。医師が常駐しない介護施設の場合は、入居者の容体が急変した際には、看護師が応急処置を施し、救急隊員や医師への引き継ぎの役割を担います。最近では、介護施設での新型コロナウイルス感染症のクラスター(感染者集団)を発生させないための感染対策の役割も担っています。介護老人保健施設で働く看護師数は2019年時点で2万7,000人、介護老人福祉施設では2万6,000人、社会福祉施設では1万9,500人となり、その需要は増えています。
このほか、地域の保健センターや民間企業の健康管理室における看護師の今後の需要も増えると考えられています。
一方、高度化し専門分化が進む医療の現場において、水準の高い看護を実践できる看護師が求められています。「認定看護師」というもので、看護分野ごとに日本看護協会が認定しています。看護師として5年以上の実務経験を持ち、日本看護協会が定める600時間以上の認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。2019年7月時点で 約2万の認定看護師が全国で活動しています。認定看護分野としては、「救急看護」など21分野が特定されています。
認定看護師は、難しい治療や看護が必要な患者・家族に対して専門知識に基づき判断して実践します。また、他の看護師に対し、専門知識や看護技術などを指導し水準の高い看護を行えるように働きかけたり、看護の現場で直面する問題や疑問の相談に乗り、改善策を導き出せるようサポートしたりします。認定看護師は、病院のほか、訪問看護ステーションやクリニック・診療所、介護保険施設などで活動しています。
国は2015年に専門性を有する看護師が難易度の高い診療の補助業務ができるという「特定行為研修」という制度を創設しましたが、同協会は、既存の認定看護師にこの特定行為研修を組み入れた「特定認定看護師」という形に認定制度を改めて増員を図りたいとしています。入院や在宅でも、医師の到着を待たずに、適切な処置が可能となる実践能力の高い看護師が増えることが期待されます。
このほか、専門分野のみならず看護分野全体のスペシャリストである専門看護師や特定看護師よりも医療処置を実施できる幅が広い診療看護師などより専門的な分野の資格もあります。
看護師の資格取得はゴールではなく、あくまでスタートとなります。人の命を預かる看護師の仕事は肉体的にも精神的にもハードとされますが、人一倍やりがいを感じる機会が多い職業といえるでしょう。
メディアスグループは、医療機器の販売を中心とした事業を展開しています。医療に携わる私たち(Medical+us)は、医療現場や人々の健康的な明日へ役立つ情報をお届けする情報発信源(Media)の役割も果たしていきたいと考えています。