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新型コロナの後遺症「ロング・コビット」は軽症者でも長期化

新型コロナの後遺症「ロング・コビット」は軽症者でも長期化

公開日:2021.05.12

新型コロナウイルス感染症では、感染から回復しても倦怠感や味覚障害など様々な症状が長期間続くケースが報告されています。また、発症直後にみられなかった脱毛などの症状が数ヶ月後に出現することもあり、日常生活に支障が出るケースも少なくないとされます。このような患者は「ロング・コビット」と呼ばれ、新型コロナウイルス感染症の大きな問題となっています。

何らかの後遺症を訴える患者は約8割

      Lancet.2021 Jan 16;397(10270): 220-232.より作図

新型コロナウイルス感染症患者は、回復後も強い倦怠感や睡眠障害、脱毛などに悩む人が多いとされます。今年1月、Lancetに報告された中国・武漢の研究グループのデータでは、武漢市の病院から退院した患者約1,700例を対象として退院6ヶ月後に聞き取り調査したところ、何らかの後遺症を訴える患者が76%もいました。その内訳としては、倦怠感・筋力低下が63%、睡眠障害が26%、脱毛が22%、嗅覚障害が11%、動悸が9%、関節痛が9%、食欲不振が8%、味覚障害が7%、眩暈が6%、下痢・嘔吐が5%、胸痛が5%などで、症状が多岐にわたっていました。

コロナ後遺症は、重症患者だけでなく、軽症患者にもみられています。今年2月、JAMA(米国医師会誌)に報告された米・ワシントン大学の研究グループのデータでは、新型コロナウイルス感染症患者177例を発症後9ヶ月間追跡したところ、対象者の9割近くを占める軽症外来患者の約33%は何らかの後遺症を抱えていることが判明しました。また、軽症外来患者でも家事など日常の生活動作に支障が生じたケースが約6%にみられました。

新型コロナの後遺症は精神や神経にも及んでいます。今年5月、Lancct Psychiatryに報告された英・オックスフォード大学の研究グループのデータでは、新型コロナウイルス感染症に感染した約23万6,000例を分析したところ、診断から半年以内に約34%が精神・神経疾患の診断を受けました。多くみられたのは、不安障害(約17%)や気分障害(約14%)などでした。脳卒中や認知症などの神経障害は発症率は低めでしたが、重症患者にかなりの割合でみられました。

一方、昨年10月、0pen Forum Infectious Diseasesに報告された国立国際医療研究センター病院の研究グループのデータでは、新型コロナウイルス感染症で同病院に入院し、2020年2〜6月に退院した患者63例に7〜8月にかけて聞き取り調査したところ、後遺症の脱毛は約24%にみられ、発症後すぐに脱毛することはなく、発症2ヶ月後に脱毛することが多いことがわかりました。脱毛が治るのにかかったのは2ヶ月以上でした。

後遺症の発症メカニズムは複合的な要因が関係

後遺症が起きる理由については未解明な部分が多いとされますが、複合的な要因が絡み合っていると考えられています。その1つは臓器自体のダメージです。新型コロナウイルスは、ヒトのアンジオテンシン変換酵素(ACE)2受容体というたんぱく質に結合し細胞内に侵入する性質があります。ACE2受容体は肺をはじめ鼻や舌の粘膜、心臓、脳、腸などに存在します。このため、肺の細胞内でコロナウイルスが増殖し細胞が障害されると、肺機能が低下し咳や息切れなどの呼吸器症状が出現します。鼻や舌の粘膜の細胞が障害されると、嗅覚や味覚障害が生じることになります。心臓で細胞障害の反応の1つとされる炎症が起きると動悸に、さらに脳内で炎症が起きるとブレイン・フォグ(集中力や記憶力の低下など)につながることが考えられています。

また、コロナウイルスが全身の細胞に感染してサイトカインストームという過剰な炎症を引き起こし、臓器を障害する可能性も指摘されています。このほか、コロナウイルス自体は体内から消失しても、免疫反応が一部残存することがあり、自己抗体が様々な臓器の炎症を引き起こし、症状を誘発している可能性も示唆されています。

コロナ後遺症に対する根本治療はなく、症状をやわらげる対症治療が行われていますが、コロナ後遺症のある人がワクチン接種をしたところ、疲労感や息苦しさ、不眠などの症状が改善したことが明らかになりました。今年3月、medRxivに報告された英・ブリストル大学の研究グループのデータでは、ワクチン未接種群(22人)の後遺症の改善率が15.4%に対して、ワクチン接種群(44人)は23.2%と有意に高くなっていました。ワクチン接種で活性化した免疫細胞が回復後も体内に残存していた微量のコロナウイルスを消滅させた可能性が仮説として考えられています。

コロナ後遺症が起きる仕組みの解明や有効な治療法の開発が望まれます。

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アソースナビ編集部

メディアスグループは、医療機器の販売を中心とした事業を展開しています。医療に携わる私たち(Medical+us)は、医療現場や人々の健康的な明日へ役立つ情報をお届けする情報発信源(Media)の役割も果たしていきたいと考えています。

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