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公開日:2021.08.13
新型コロナウイルス感染症の流行が拡大するなか、コロナ感染を危惧して医療機関の受診を控える人が増えているとされます。しかし、透析患者は人工透析を受けなければ命に関わるため、定期的な通院が欠かせません。こうしたなかで、今、在宅透析が注目されています。
通常の血液透析は週 3 回程度(1回3〜5時間)の通院が必要であり、多人数が同時に同じ空間を共有して行う治療です。患者は重症化リスクの高い高齢者や糖尿病などの基礎疾患を抱える人が多いとされます。多くの施設では、ベッド間はカーテンを隔てて約1メートルといいます。新型コロナの感染経路は、飛沫感染と接触感染ですので、対策を徹底しないと、1人の患者から複数の患者やスタッフへの感染伝播、あるいは1人の医療スタッフから複数の患者や医療スタッフへの感染伝播が起こる可能性があります。透析施設では日頃から感染対策に力を入れていますが、新型コロナの感染拡大に伴い、集団感染事例が報告されています。
感染リスクを減らす選択肢として在宅透析が注目されています。在宅透析は、治療を受けるために透析施設へ通院する必要がないため、新型コロナ流行下の今日では、3密(密閉、密集、密接)を避けて、コロナを予防するのに適した透析法といえます。在宅透析としては、在宅血液透析(HHD)と腹膜透析(PD)があります。在宅血液透析は、自宅に透析を行うための機器を設置し、患者自身が回路組立、穿刺、透析中の状態管理、返血などの手技を行うものです。自宅では自由な時間に透析ができます。保険適用上の制約のため、透析施設では、週3回の血液透析が一般的ですが、HHDでは、そうした制限はなく頻回にかつ透析時間を長くすることも可能なので、予後の改善が期待できます。ただし、在宅血液透析を始めるに際しては、訓練が必要で、特にシャントに針を刺す穿刺が難しく、訓練期間に個人差はありますが通院しながらだと1〜3ヶ月とされます。また、HHDは、事故に備え介助者がいることが条件となっています。このため、在宅血液透析患者は全国で約700人、全透析患者の0.2%に留まっています。
一方、PDは腹膜透析液、器材、バッグ交換ができる場所の3つが確保できればどこでも治療を行うことができます。連続携行式腹膜透析(CAPD)では、腹部に挿入したカテーテルという管を介して自身で透析液を1日4回程度注入・交換します。また、就寝中に機械で透析液を交換する自動腹膜透析(APD)もあります。操作は簡単で、専用の機械が自動で注液、排液します。日中の時間が自由に使えるので、就労や就学に適していて、通院はいずれも月1、2回で済みます。PD患者は全国に約1万人おり、全透析患者の約3%を占めます。ただし、PDは治療期間に個人差があります。透析の効率が低下したり、腹膜が硬くなったりするため、継続できる期間は5〜10年とされます。
在宅透析患者(HHDおよびPD)の新型コロナ感染は、昨年10月2日時点で7人を数え、年代別にみると、40代1人、50代3人、60代3人で、70代、80代は皆無でした。この事実から、在宅透析は重症化や死亡リスクの高い70代以上でより新型コロナに対する予防効果があることが明らかになりました。また、透析患者が新型コロナに感染すると、入院管理で透析を行うことになっていますが、在宅透析は医療者への負担が通常の血液透析よりも少なく、パンデミック下での安定した医療を提供できる体制の維持につながるものと考えられます。
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