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公開日:2023.06.22
日本の医療保険制度は、国民皆保険制度に基づく高い充実度と医療サービスの質が特徴であり、国際的に高い評価を受けています。同制度の仕組みや特徴と海外の制度との比較についてまとめます。
日本の医療保険制度は、国民皆保険制度であり、乳児から高齢者まで国民全員が加入しています。その種類は、①自営業者や農業従事者、無職の人が加入する国民健康保険(地域保険)、②被用者保険(職域保険)、③75歳以上の人が対象となる後期高齢者医療制度の3つに分類されます。②の「被用者保険」には、主に中小企業の被用者が加入する「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」や、主に大企業の被用者が加入する「組合管掌健康保険(健康保険組合)」、国家公務員や地方公務員、私立学校教職員など対象とした「共済組合」などがあり、保険料の一部を事業主が負担します。
被保険者は毎月一定額の保険料を支払うことによって、病気や怪我で診療を受けた際に保険医療機関等に窓口で支払う自己負担額が、その診療に係る医療費の1割〜3割(被用者保険で3割、国民健康保険で3割から2割、後期高齢者医療制度で1割)となります。 診療に係る医療費から被保険者の自己負担分を除いた額は、診療後、保険医療機関等が保険者に請求することにより、保険者から保険医療機関等に支払われます。国民医療費の財源は、被保険者の保険料と自己負担などに加えて、公費が含まれています。
医療サービスと価格は、診療報酬点数表によって規定されています。医療保険では、病気やけがの治療だけでなく、定期予防接種や健康診断などの費用も給付されます。また、医療費の家計負担が重くならないよう、保険医療機関や保険薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」があります。上限額は、年齢や所得に応じて定められています。このようにして、医療費負担が原因で、国民が経済的に困窮することを回避しています。
日本の医療保険制度の特徴としては、国民全員を公的医療保険で保障していることです。保険証があれば、いつでも自由にどの医療機関でも公的保険を使った医療を受けられます。また、負担の少ない医療費で高度な医療が提供されていることや公費が投入されていることも挙げられます。
では、海外ではどのような医療の仕組みとなっているのでしょうか。英国、フランス、米国を紹介します。
英国では、税金と国民保険料で運営されている公的医療制度「国民保険サービス(NHS)」があり、医療を原則無料で提供しています。このため、貧困層や低所得者の人々にも健康ケアが提供されています。また、体の不調があった際は、その部位や種類に関わらず、まずGP(General Practitioner:家庭医・総合診療医)と呼ばれる地域のかかりつけ医療機関を受診して、必要に応じて専門病院や大学病院に紹介される仕組みを取っています。このように医療機関が役割分担をしっかりと持つことで専門性や効率性が向上し、必要な人に必要な医療が届けられるというメリットがあるほか、病気の早期発見が可能な検査やスクリーニングプログラムも提供されています。一方で、かかりつけ医を受診しようにも 2〜3週間待たされるケースや、専門医への受診が必要と診断され、紹介状を持って専門医の予約をとっても受診まで数か月単位で待たされることも珍しくないといわれます。
フランスでは皆保険制度があり、自己負担は3割です。患者は自分の希望する医師や病院を自由に選ぶことができますが、かかりつけ医を通さずに専門医を受診した場合は7割負担となります。
一方、米国では、世界的に有名な医療機関や専門医が多く存在し、ハイレベルな専門医療が提供されていますが、高齢者と障がい者、低所得者だけが公的医療保険制度に加入でき、そのほかの国民は民間の医療保険に加入するか、自己負担で医療費を支払う必要があります。民間の医療保険の保険料は、年齢、職業、健康状態によって異なりますが、保険料が高額になるため、加入できない人も少なくありません。また、全ての医療費が給付されるわけではなく、自己負担額も高額になることがあります。一般の初診料だけで150〜300ドルかかるとされています。そのため、米国では、経済的な理由で医療機関を受診できない人が多く、医療費の負担が大きな社会問題となっています。
諸外国との治療費の比較では、診療科目、医療機関、入院期間、治療方法によって異なりますが、虫垂炎の治療費は、一般的には、フランスでは約108万円、イギリスでは約94万円~135万円、米国では約74万円、日本では約60万円と、国によってさまざまです。
このように海外と日本では、医療機関へのアクセスや医療費の決め方など異なる仕組みとなっていますが、日本の国民皆保険制度や医療へのフリーアクセス、高額療養費制度などの仕組みは、諸外国に比べても遜色のないものとなっています。しかし、高齢化の進展や医療技術の進歩などにより、日本の医療費は急速に増加しています。そのため、日本の医療制度は財政的にも厳しい状況にあります。今後この制度が存続していくためには、制度の改革や財源の確保が課題となっています。
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