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ワクチン接種先進国におけるデルタ株の影響とブースター接種への動き

ワクチン接種先進国におけるデルタ株の影響とブースター接種への動き

公開日:2021.07.14

コロナワクチン接種「先進国」とされるイスラエル、英国、米国では、コロナワクチンの接種が先行し、行動規制が大幅に緩和されています。ポストコロナのニューノーマルを実現し、世界から注目されていますが、ここにきてインド由来の変異株「デルタ株」の影響で新規のコロナ感染者数の増加がみられています。これらの国のコロナ感染の現状と課題についてレポートします。

イスラエルではデルタ株の影響などでワクチンの発症予防効果が低下

コロナワクチンの接種ペースが最速クラスのイスラエルでは、昨年12月よりファイザー製のワクチン接種を開始し、人口930万人中約60%近い510万人が2回目の接種を終えています。1日の新規感染者数が十数人まで減少し、今年6月には行動制限がほぼ解除されました。しかし、6月中旬以降、海外からの渡航者を介してデルタ株の流行が拡大し、7月に入り新規感染者数が500人を超える日もみられるようになってきました。新規感染者の約9割がデルタ株とみられ、半数以上がワクチン接種済みの人でした。重症患者は数十人とされます。このため、6月中旬から屋内でのマスク着用が再び義務化されました。

イスラエル保健省が7月初旬に発表した報告書によると、新型コロナウイルス感染症に対するファイザー製ワクチンの2回接種の発症予防効果は7月5日の発表で64%、重症化予防効果は93%です。5月の報告書では、発症予防効果、重症化予防効果ともに95%超としていました。発症予防効果の減少の理由としては、デルタ株の影響と行動制限の緩和が指摘されています。

Our World in Dataの集計に基づき作成

英国では感染者増も死者数が少ない

ワクチン接種が進んでいる国の1つとされる英国では昨年12月、ロックダウンとともに西側諸国に先んじてワクチン接種が開始されました。医療資格のない人も接種業務に関わり大規模な接種を推進。ファイザー製とアストラゼネカ製を中心に接種が進められ、4月からモデルナ製も加わりました。7月4日時点で全成人の86%が1回目の接種を終え、2回目の接種を完了した人は64%に上ります(7月10日時点で1回目完了:全人口の66.2%、2回目完了:全人口の51%)。新規感染者は5月中旬は1日約2,000人でしたが、6月下旬以降1日2万人台と高い水準で推移しています。このうち95%がデルタ株によるものとされます。一方、7月1日時点では入院患者数は約1,700人、新たな死者数は20人台に抑えられています。重症化例はワクチン未接種か1回接種者が多いといわれています。

英国では、今年1月から、ワクチンの製造と分配が滞るなか、多くの人の免疫をある程度まで高めるため、接種期間を12週間として1回目の接種を優先する運用を開始しています。英イングランド公衆衛生庁の5月の調査結果では、ファイザー製を2回接種すると、デルタ株に対し、約88%の発症予防効果がありましたが、1回だけでは約33%の効果しかありませんでした。アストラゼネカ製は1回の接種が2回に比べ、効果が半減していました。こうした情勢のなか、英政府は今月19日をもって人口の集中するイングランドでほぼ全ての行動規制を撤廃する予定といいます。英国はコロナとの共生を目指す方向に舵を切ったとの見方も出されています。

Our World in Data ジョンズ・ホプキンス大学 システム科学工学センター COVID-19 Dataに基づき作成

米国では接種の伸び悩みが課題

米疾病対策センター(CDC)の発表によると、コロナワクチン接種で先行する米国では全人口の約55%(約1億8,300万人)が少なくとも1回のコロナワクチンの接種を受け、約47%は免疫獲得に必要な回数の接種を完了しました。米国ではファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製(いずれも2回接種)のほか、1回の接種で免疫を獲得できるジョンソン・エンド・ジョンソン製が認可されています。地域ごとに接種の進み具合に差があるほか、若者を中心に接種が伸び悩んでいるとされます。新規感染者数は7月に入り1日約1万5,000人で推移し、1週間前に比べて増加傾向を示しています。死亡者数は1日約160人で推移しています。新規感染者の 過半数をデルタ株が占めているとみられています。CDCによると、過去半年に国内いくつかの州で収集した予備データでは、コロナによる死亡者の99.5%がワクチン未接種であることがわかりました。米国ではワクチン接種者は、屋内外や人数の規模に関わらずマスク着用をしなくても良いことになっています(ただし、公共交通機関や、空港や駅などでは引き続き、ワクチン接種完了者もマスクの着用が義務付けられています)。

ブースター接種が必要になる可能性も

接種が進む国々で注目されているのが、「ブレークスルー感染」で、2回接種して2週間以上経過してもPCR検査で陽性反応が出るケースです。2回目の接種から6ヶ月間経過すると再感染リスクが高まることが、イスラエルから報告されています。抗体が低下するため、再感染リスクが生じるものと考えられます。ファイザーの調査によると、3回目の接種(ブースター接種)を受ければ抗体レベルが2回接種時の5〜10倍になるといいます。同社は近く1万人を対象としたブースター接種の治験を実施する予定です。そして、欧米の規制当局にブースター接種の認可を申請することにしています。今後、デルタ株以外にデルタ株がさらに変異したデルタプラス株や南米やペルーで猛威を振っているラムダ株の感染拡大も予想され、特に高齢者では感染を防ぐ力を示す抗体価が上がりくい人に感染するケースが考えられ、追加接種が重要な意味を持つかもしれません。

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アソースナビ編集部

メディアスグループは、医療機器の販売を中心とした事業を展開しています。医療に携わる私たち(Medical+us)は、医療現場や人々の健康的な明日へ役立つ情報をお届けする情報発信源(Media)の役割も果たしていきたいと考えています。

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