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働き方改革関連法の医療機器物流への影響

働き方改革関連法の医療機器物流への影響

公開日:2024.06.18

2024年4月に全面施行された働き方改革関連法は、各産業界に大きな影響を及ぼすことが予想されています。特に「物流2024年問題」と呼ばれる輸送力低下が深刻な課題となっており、なかでも医療機器分野においてはその影響が大きいと懸念されています。ここでは、その背景と問題点、対策についてまとめます。

年間960時間の時間外労働上限の規制

医療機器の流通の過程は複雑多岐にわたり、さまざまな関係者が密接に関わっています。各医療機関が、担当販売業者の訪問時に直接注文もしくは、電話やFAXなどで注文し、販売業者等がこれを一般的な商品コードに変換して製造販売業者へ発注します。その後、製造販売業者から出荷が手配され、販売業者等を経て、最終的に医療現場で使用されます。

今回、働き方改革関連法の施行により、2024年4月より長時間労働の是正が法的に義務付けられ、医療機器の輸送に従事するドライバーについても、年間960時間の時間外労働上限規制が課されました。さらに、1年間の拘束時間は原則3,300時間(これまでは3,516時間)に制限されることとなりました。過酷な労働環境が常態化していた運送業界にとって、この新たな規制を遵守しつつ従来の物流水準を維持することは、難しい大きな課題となっています。実際、時間外労働上限でシミュレーションした結果、輸送能力が14%程度不足すると予測されており、医療機関への医療機器供給に支障が生じかねません。

配送リードタイムが長期化

働き方改革の物流面への影響は、様々な課題が予想されています。まず輸送力低下により、配送リードタイム(製品の注文を受けてから納品までにかかる期間)が長期化する恐れがあります。特にドライバーの確保が困難になれば、長距離輸送での遅延が避けられなくなる可能性があります。人手不足により輸送品質が低下し、荷物の外装ダメージが増加するリスクもあります。また、1日の運行便数が減少すれば、これまでできていた複数回の柔軟な納品ができなくなり、緊急時の対応にも支障をきたしかねません。過疎地域では、インフラ不足や需要の変動、悪天候などの理由から、安定供給が危ぶまれる状況になりかねません。加えて、運送会社が働き方改革関連法遵守やドライバー確保のためにコストを増やせば、その分が運賃値上げに転嫁され、製造販売業者や販売業者の物流コストが増大する可能性もあります。この場合、保険償還価格(医療機器を使用した際に保険者から医療機関に支払われる価格)が設定されている医療機器については価格転嫁に限界があるため、コストを製造販売業者や販売業者側で吸収せざるを得ない状況になる可能性があります。

さらに、燃料費や人件費の高騰など社会情勢の変化により、全ての医療機器の製造コストが増える恐れもあります。販売業者が行う在庫管理や緊急対応などの適正使用支援業務については、医療機関との契約がない場合があり、そのサービス提供が困難になるリスクがあります。このように、物流の2024年問題は物流面だけでなく、様々な側面から医療機器業界に重大な影響を及ぼすと予想されます。

予想される医療機器物流への影響

配送遅延に備え早期発注を

こうした状況を踏まえ、厚生労働省はそれぞれの関係者に以下の対策を示しています。

①製造販売業者
配送リードタイムの延長に備えて十分な在庫を確保することで、納品の遅延に備える。また、物流コストの上昇や物価の変動を踏まえて、適切な価格設定を行う。このため、販売業者や運送業者からの価格交渉に適切に応じ、協議を行いながら持続可能な価格を確保する。さらに、物流コストの透明化を図り、販売業者には物流コストの上昇要因や削減策に関する情報を提供する。これにより、販売業者は適切な価格決定と物流負荷の軽減に努めることができる。また、不採算要望に関する制度を活用し、製造販売業者との間で安定した契約を維持し、医療機器の安定供給を確保する。

②販売業者
配送リードタイムの延長を見越して早期に発注を行い、納品ルールを柔軟に適用することで、物流の効率化を図る。さらに、まとめ買いを促進することで、発注回数や配送回数を減らし、効率的な物流を実現する。そして、適正な価格設定と物流コストの透明化を通じて、持続可能なビジネスモデルを構築する。

③医療機関
配送リードタイムの延長を踏まえて早期に発注を行い、在庫を適切に確保する。また、納品ルールの緩和やまとめ買いの促進により、物流の効率化を図る。軽微な箱汚れや軽微な外装の破損であって内部の製品には影響がない場合には返品しない。さらに、適切な価格設定を求め、適正使用支援ガイドラインを活用することで、安定した医療機器の供給を確保する。

各業界団体による物流2024年問題への対応策の紹介

これらの対策は、働き方改革関連法の施行を機に、適正な労働環境を確保しつつ、医療機器の安定供給を持続可能な形で実現するための新たな体制を構築することを目指しています。また、各業界において、2024年問題に対応するため、すでに様々な取組みが進められています。医療機器業界特有の商慣習も存在しますが、他の業界の対応策も参考にしつつ、効率化とデジタル化を通じ、労働環境の改善と物流の効率化の両立を実現することが期待されています。

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MEDIUS

アソースナビ編集部

メディアスグループは、医療機器の販売を中心とした事業を展開しています。医療に携わる私たち(Medical+us)は、医療現場や人々の健康的な明日へ役立つ情報をお届けする情報発信源(Media)の役割も果たしていきたいと考えています。

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